5月勉強会「磁性アタッチメント」「歯科医院で行う訪問栄養食事指導」

<WEB研修>
①研修名:磁性アタッチメント
講師  :日本歯科医学会(ナレーションのみ)

近年、むし歯の罹患率や歯の喪失率は減少傾向にあります。これは、社会的にみて歯科においても予防歯科という考え方が徐々にではありますが浸透してきていることの現れだろうと思います。しかしながら、高齢化の進む日本社会においては、歯を失ったことで「義歯」を使用する必要性に見舞われる方はまだまだ多いです。とりわけ、総義歯においては、「外れやすい・しっかり噛めない」などの訴えに直面することが日々の臨床においても少なくありません。こうした問題の解決策の一つに「磁性アタッチメント」があり、これまでは全てにおいて自費診療だったのですが、昨年9月から保険適用となりました。
これ用いることで、義歯としては「支持・維持に優れる」、「着力点が低くなり歯にかかる負荷が軽減できる」、「鉤歯の歯軸方向を気にするといったことがなくなることで着脱が容易となる」、といったことが期待できます。患者様のQOL向上につながるとともに、義歯に対したもたれがちなマイナスイメージも多少、変わってくることが期待できると感じています。
今月の勉強会では、あらためて磁性アタッチメントの製作手順や注意点を学びました。
「形成→印象→根面板・磁性アタッチメント・キーパーの装着→清掃・管理」について、一連の臨床術式を動画で確認しました。
特に形成においては、「軟化象牙質を残さない」「ポストの太さ・長さの過不足ないように設定する」「SCTAを阻害しない適切なマージン設定を行う」
印象においては、「圧排糸などを用いて防湿環境を整えたうえで実施すること」「アンダーカットのない外側性・内側性に注意した形成が行われていること」を大切にしなければいけません。
このように製作における重要な項目をわかりやすく学ぶことができました。保険適応になって日が浅いこともあり、まだまだ患者様には認知されておらず、歯科医師側もこれまで日常的に携わることの少ない分野であっただけに、必要な技術の習得を行いつつ、患者様への治療オプションとしての積極的な提案ができればと考えています。


②研修名:歯科医院で行う訪問栄養食事指導
講師  :稲山未来 先生(管理栄養士)

脳卒中の後遺症や高齢化に伴う口腔機能の低下により、摂食嚥下機能の低下をきたす患者様は少なくありません。明らかな症状を抱えて治療の異例に至るケースもさることながら、機能低下をあまり自覚・他覚されないまま放置されている潜在的な患者様も少なくないと感じています。高齢化の進む日本社会では、歯の治療や予防だけが歯科医師の仕事ではありません。医師、管理栄養士をはじめとする介護に携わる全ての職種の方と連携を図り、摂食・嚥下障害を抱える患者様への口腔リハビリや栄養指導を適切に行い、ご家族と連携して改善を目指すことも大切な役割です。当院は訪問診療に力を入れていることもあり、このような患者様に遭遇する機会は少なくありません。しかしながら、リハビリや訓練に取り組んで改善を目指すことよりも食事のレベルを下げたり経口摂取から経管栄養に切り替えることの安全性を取るという意識と多職種で連携して改善に取り組むということが常態化していないこともあり、ニーズが多いという実感はありません。しかし、現代社会において今後、必要不可欠となってくることは確実であろうと感じていました。

今回の勉強会では、管理栄養士という職種を理解し、医師指導のもとで行われる栄養指導において、歯科医師はどのような角度でコンタクトを持って介入していけるものなのか、ということを学びました。
今回の講師は「歯科管理栄養士」という経歴をもっておられました。正直、初耳でした。

歯がないから食べられない、それは当然なのですが、ただ歯を補えば食べられるようになるとも限らない。「摂食嚥下」というプロセスにおいて、摂食の部分だけに介入するのではなく、嚥下における口唇・舌・下顎の動かし方、さらには食事時の周囲の環境や姿勢にも着目することが必要であるということでした。実際の症例を用いた解説では、胃ろうによる経管栄養から完全経口摂取へと回復を果たしたケースが紹介されており、回復の可能性の大きさとともに、周囲の人間がいかに前向きにサポートすることができるかが鍵になるのだなと感じました。