8月勉強会「Endo Case Discussion #2〜4」
講師 :吉岡 隆知先生、山内 隆守先生
今月は、根尖病巣を有する歯牙に関する診査・診断から治療方針の立て方までの内容を、具体的な症例をもとに学びました。
まず、『歯根尖含有病変』についての議論がありました。右上前歯部の歯肉の腫脹を主訴としたケースで、病巣の中心は側切歯側でした。中切歯は冷刺激診・電気診ともに反応せず、側切歯は電気診でやや鈍い反応が確認されました。これを基に、中切歯の根管治療を先に進めました。初めは歯肉の腫脹が改善しましたが、後に再発、最終的に側切歯の根管治療も行い、治癒を達成しました。X線写真と歯牙の実際の状態を総合的に判断し、適切な治療を進めることの重要性を感じました。今回の例では、中切歯が反応しなかったために、その治療を先行しましたが、異なる経過をたどることもあるため、診査の結果も参考として考慮する必要があると学びました。
次に、『根尖病巣と根尖孔外異物の関連』についてです。疲れた時に特に感じる歯茎の腫れを主訴とし、X線写真で根尖孔外に破折ファイルと思われる異物が確認されました。異物の除去は外科手術が必要とされましたが、最終的には異物の除去は保留とし、再根管治療の経過を観察しているとのことでした。このケースでは、異物の存在が症状の原因として強調されがちですが、治療方針を決める際には、患者の状態や希望も考慮し、総合的に判断する必要があると感じました。
最後に、『歯根側方への根尖病巣の拡大』についての症例を取り上げました。他院での治療が効果を示さないケースが、我々のクリニックに紹介されました。下顎側切歯と犬歯の間に見られる根尖病巣の拡大が特徴でしたが、根尖周辺の病変は限定的でした。治療選択の際、側枝や歯根破折の可能性、外科的歯内療法の適用などが検討されました。最終的に歯根端切除術が選択され、骨吸収の改善が確認されました。
根管治療は多くの場合、直接の視認が難しいため、事前の診査やCT画像診断など、多岐にわたる情報の収集が極めて重要です。歯科医師として、日々の臨床で新たな情報や多様な症例に触れ、最適な治療方針を導き出す能力を磨き上げていく必要があると感じました。
研修歯科医師 古堅